こだわりと歩み

こだわりと歩み

先代社長である中村国夫が1963年10月に東葛飾郡我孫子町に創業いたしました。資金不足のため極めて悪い土地にわずか8坪の小さな店舗でした。 来客はほどんどなく外商でも相手にされず、せっかく得意先を取っても地元の古い有力業者に価格とノベルティ景品などで負けてしまう有様でした。
そこで考えた末に、競合相手が持っていない商品を扱うべく各地の地酒に着目し、「本物の日本酒」を求めて全国の蔵元を足で歩いて集めることにしました。 しかし当然ながら当社の知名度はゼロであり、取引はままなりませんでした。また宅急便の登場以前の時代のことであり、仕入れた商品を東京の品川や汐留まで 運送業者に頼んで引き取りに行ったり、鉄道貨車で送ってもらったりと物流面での苦労も多かったのです。
資金面でも、通常であれば問屋からの仕入れは支払いサイト45日ですが、当社の場合は現金で仕入れねばなりませんでした。そのため銀行借入れを申し込みましたが、 新規業者でろくに担保もない当社にはスムーズな融資は実行されなかったのです。加えて酒の小売価格は一律であり、地方からの物流費の上乗せもできず、粗利益率は 低迷したままで苦難の時代が続きました。
地酒を扱った当初は全く売れず、商品が劣化して夜半に家人に内緒で一人涙を流しながらドブに捨てたこともありました。返品すれば仕入先に次回から売ってもらえず返品運賃もかかる。いよいよ廃業を思い立ち、ある人に相談をしたところ、「世の中には潰れてもよい店と潰れては困る店がある」と言われ、気持ちを新たに一からやり直すことを決意しました。そして店先に手製の案山子(かかし)を掲げて集客を図り、店に入ると利き酒ができるようにし、商品ごとに「店主一口メモ」や「酒の履歴書」を付けるなど、様々なアイディアの実行と品質管理の徹底を貫いてきました。そのうち顧客の間からこの店を支えようという声が挙がり、会員制の地酒愛好会である「かすが会」が結成されるに至りました。この言わばボランティアのファンクラブは、優れた日本酒の紹介と啓蒙を進めるために今なお研修会を行っており、本年には設立30周年を迎えることになったのです。
やがて地酒ブームが到来し、さまざまな経営努力が実を結び、度重なる増資を繰り返すことで経営も安定してまいりました。国道6号線の拡幅工事に伴い1980年に現在の位置に移転、土地・建物とも大幅に広くなりました。
1981年には業界初の「日本酒オークション」を当社主催のもと柏高島屋で開催し、業界に波紋を巻き起こしました。これまで門外不出として賞味されていた吟醸酒が、一般にも受け入れられるとあって、蔵元の意気込みに弾みをつけたのです。
こうした業績が認められ、1983年には社団法人食料品流通改善協会主催の『第7回優良経営食料品小売店全国コンクール』において農林水産大臣賞を受賞いたしました。酒販店としては初めての受賞でありました。
一方、無名でも高水準な日本酒・焼酎を普及させるため、全国各地の酒販店とグループを組織し、『東西の地酒グループ』として活動を始めました。各地で試飲宣伝会や講演会、古くより伝わる酒道の実演など様々な活動を開催し、酒販業界で注目されました。
2002年に株式会社春日やとして法人組織を変更し、同時に2代目社長として中村靖が就任いたしました。その後も焼酎ブームなどを受けて売上げも順調に拡大、2003年には年商10億円を突破いたしました。2005年末には初代社長が逝去いたしましたが、その後も社員一同結束して活動、全国各地の百貨店に販路を拡大しながら現在に至っております。